カテゴリカルデータの分析方法は?集計・検定・数値化まで実務での扱い方を解説

カテゴリカルデータの分析方法(集計・検定・数値化)を実務例で解説する記事のアイキャッチ画像 統計学

 カテゴリカルデータが何かは分かった。でも「じゃあ、どう分析すればいいの?」で手が止まっていませんか?平均も標準偏差も使えないデータは、扱い方を間違えると結論ごと誤ります。私も研究開発の現場でカテゴリカルデータの平均値を計算してしまっていました。この記事ではクロス集計・カイ二乗検定といった分析の基本から、実務で迷いやすいデータの分類、ダミー変数による数値化までFAQ付きで解説します。読めば自分のデータに合う扱い方を自力で選べるように。「分類のデータには分類の道具」——これが結論です。


カテゴリカルデータの分析はなぜ平均が使えないのか?

 前編で「カテゴリカルデータはラベルのデータ」と整理しました。でも正直、「分類できたから何?」と思いますよね。カテゴリカルデータの分析が数値データと別扱いなのは、ズバリ使える分析の道具がまるごと変わるからです。

平均が使えない、はけっこう深刻な話

 数値データの分析は、平均と標準偏差が主役です。ところがカテゴリカルデータでは、この主役2人がそもそも登場できません。「合格」と「不合格」の平均は計算できないからです。

 笑い話みたいな実例を1つ。昔の私は、5段階で官能評価をした結果を集計して「平均3.8点、前回より0.2点アップです!」と報告していました。一見それっぽいですが、順序尺度では「4と5の差」と「1と2の差」が同じ幅という保証がないので、平均3.8点という数字は実はかなり怪しいです。統計を学んだ今なら、割合の内訳で報告します。そのほうが実態が伝わりやすいかと思います。

カテゴリカルデータの分析方法:基本セットはこの3つ

 カテゴリカルデータの分析の基本セットは下記の通りです。

  • 度数集計と割合:各カテゴリーの件数を数えて%にする(合格率95%、割れ不良が60%)
  • クロス集計:2つのカテゴリカルデータを掛け合わせた表(ライン別×不良モード別の集計表など)
  • カイ二乗検定:クロス集計表の偏りが偶然かどうかを判定する検定
  • ロジスティック回帰:カテゴリごとの確率を予測する
カテゴリカルデータと数値データで使う分析手法を目的別に対応させた図。要約するならカテゴリカルデータは度数集計・割合、数値データは平均・標準偏差。関係を見るならクロス集計と散布図・相関係数。差を確かめるならカイ二乗検定とt検定・分散分析。予測するならロジスティック回帰と回帰分析。同じ目的でもデータの種類で道具が変わる。
fig_cd03_分析手法の対応図

 実務のイメージで言うと、「1号機と2号機で不良率に差がある気がする」というとき。ライン×判定(OK/NG)のクロス集計表を作り、カイ二乗検定にかければ「その差は偶然の範囲か、意味のある差か」を数字で語れます。感覚で「2号機が悪い気がする」と言うのとは、説得力が段違いです。カイ二乗検定の詳しいやり方は、それだけで1記事になるボリュームなので別記事で解説予定です。

 なお、数値データ側の手法選び(t検定・分散分析・回帰分析など)は別記事のフローチャートにまとめています。カテゴリカルと数値の両方が頭に入ると、このフローチャートが一気に使いこなせるようになりますよ。

統計手法の選び方について:離散データと連続データの違いで統計手法はどう変わる?選び方と実務での使い分けを解説【後編】

実務で迷いやすいデータを分類してみよう

 定義は分かっても、実際のデータを前にすると迷うんですよね。現場でよく出る「迷いやすいやつ」を分類してみましょう。まず自分で考えてから答えを見てください。

データ答え理由
判定結果(OK / NG)カテゴリカル(名義)中間も順序もない分類
不良個数(3個)数値(離散)個数という「量」を表す
不良モード(割れ / 欠け)カテゴリカル(名義)分類ラベル
品質等級(A級 / B級 / C級)カテゴリカル(順序)順序はあるが等間隔ではない
5段階満足度カテゴリカル(順序)同上
ロット番号(Lot.2024-15)カテゴリカル(名義)数字だが量の意味なし
温度設定(低 / 中 / 高)カテゴリカル(順序)ラベル化された時点で順序尺度
温度実測値(182.5℃)数値(連続)量そのもの

 引っかけを2つ仕込みました。

 1つ目は「判定結果」と「不良個数」。同じ不良の話でも、OK/NGはカテゴリカル、個数は数値データです。「NGが何件あったか」を数えた瞬間に、その件数は数値データになります。

 2つ目は温度。実測値の182.5℃は連続データですが、「低・中・高」とラベル化した瞬間に順序尺度へ変わります。データの種類は測り方・記録の仕方で決まります

💡 実務のコツ:細かい実測値をわざわざ「高い/低い」に丸めて記録すると情報量を捨てることになります。迷ったら生の数値で記録しておくのがおすすめです。あとからラベル化するのは簡単ですが、逆はできません。

カテゴリカルデータを数値化して分析する:ダミー変数

 PythonやJMPで回帰分析や機械学習を行う際には、カテゴリカルデータをそのまま扱えない場合があります。そのため、ダミー変数化(one-hotエンコーディング)によって数値として表現し直します。

 たとえば原料メーカー(A社 / B社 / C社)を、「A社なら1、それ以外0」「B社なら1、それ以外0」という0/1の列に変換します。こうすることで、カテゴリカルデータを回帰分析の説明変数として利用できるようになります。

⚠️ 注意:「A社=1、B社=2、C社=3と番号を付ければいいのでは?」と思うかもしれませんが、この方法は適切ではありません。モデルが「A社 < B社 < C社」という順序や、「B社とC社の差はA社とB社の差と同じ」といった、本来存在しない関係を持つデータとして解釈してしまう可能性があるためです。このような誤った解釈を避けるために、カテゴリカルデータはダミー変数化(One-Hotエンコーディング)して扱うのが一般的です。

 詳しくは別の記事で扱う予定なので、今日は「ラベルは0/1に開いて数値化する」とだけ覚えれば十分です。

よくある質問(FAQ)

Q. カテゴリカルデータと質的データは同じものですか?

 A. 同じものです。教科書では「質的データ」、解析ソフトや機械学習の文脈では「カテゴリカルデータ(カテゴリカル変数)」と呼ばれることが多いだけで、中身は一緒。名義尺度と順序尺度の2種類に分かれる点も共通です。

Q. 5段階満足度の平均を出すのは絶対ダメですか?

 A. 「絶対ダメ」ではないです。順序尺度の平均は理論的には不適切ですが、実務やアンケート調査では「等間隔とみなして」平均を出す慣行も広くあります。大事なのは、平均だけで語らず割合の内訳も添えること。順序尺度と知ったうえで使う平均と、知らずに使う平均は別物です。

Q. 合格を1、不合格を0にしたら数値データになりますか?

 A. 数字を割り当てても本質はカテゴリカルデータのままです。ただし0/1にすると「平均=合格率」になるという便利な性質があって、割合の計算やロジスティック回帰などの分析につなげやすくなります。数値化はあくまで「分析の道具に乗せるための変換」で、データの正体が変わるわけではありません。

Q. 血液型のA/B/O/ABに順序をつけたら順序尺度になりますか?

 A. なりません。順序尺度と言えるのは、カテゴリー自体に自然な順序(満足度、等級など)がある場合だけです。五十音順やコード順のような「並べ方の都合」は順序尺度の順序とは別物です。

Q. カテゴリカルデータの可視化にはどのグラフを使えばいいですか?

 A. 基本は棒グラフと円グラフです。カテゴリー別の件数比較なら棒グラフ、全体に占める割合なら円グラフや帯グラフ。不良解析ならパレート図(件数の棒グラフ+累積比率)が定番です。ヒストグラムや散布図は数値データ用なので使いません。

まとめ:カテゴリカルデータの分析は「分類の道具」で

  • カテゴリカルデータに平均・標準偏差は使えない。度数・割合・クロス集計・カイ二乗検定・ロジスティック回帰が基本セット
  • 同じ現場のデータでも、判定(カテゴリカル)と個数(数値)のように種類が違えば道具も違う
  • データの種類は測り方・記録の仕方で決まる。迷ったら生の数値で記録しておく
  • 回帰分析などに乗せるときはダミー変数化。安易な連番割り当ては架空の大小関係を生むのでNG

 前後編を通して、データ分類の「カテゴリカル側」を整理してきました。数値データ側の分類(離散・連続)と統計手法の選び方まで押さえれば、データ分類の基礎は一通り完成です。社内資料や論文に出てくる「質的変数」「名義尺度」といった言葉にも、もう身構えなくて大丈夫。データを見たらまず分類する——この習慣が、正しい分析への一番の近道です。

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