前章では、L9直交表の例で直交表とは何か、どう使うのかを解説しました。
しかし、直交表はL9以外にもたくさんあり、「直交表の種類でどう違うの?」「どの直交表を選べばいいの?」と疑問に思った方はいないでしょうか?
この記事では、直交表にどんな種類があるのか、自分の実験ではどれを選べばよいのかを、分かりやすく解説します。
1. L9が使えない例——因子が5つ/2水準の因子が混ざる
第2章では、反応温度・触媒量・反応時間の3つを3水準ずつ振り、反応収率を評価する実験を例に説明しました。この例では、L9(3⁴)を使い9回の実験回数に収めることができました。
次に、攪拌速度や溶媒の種類(トルエン、THF)も因子に加えて評価したい場合を考えます。
この場合、2つの問題があります。
- L9は4列までしかなく、列が足りない。(3水準が4因子、2水準が1因子)
- 溶媒は2水準しかなく、そのままではL9に当てはめられない。

では、どうすれば良いでしょうか?
直交表はL9だけではありません。実験回数も入る因子の数も違う表が、何種類もあります。
次は、他にどんな直交表があるのか、を解説します。
2. 直交表は「2水準系」「3水準系」「混合系」の3グループ
直交表は、扱う水準の数で3つのグループに分かれます。
- 2水準系 — すべての因子が2水準。L4・L8・L12・L16 など
- 3水準系 — すべての因子が3水準。L9・L27 など
- 混合系 — 2水準と3水準が混ざる。L18 など
名前の読み方は、Lのうしろの数字が実験回数、カッコの中が(水準の数の右肩に列の数)です。L8(2⁷)なら「8回の実験で、2水準の列が7本ある」という意味になります。

「入る因子」の数は、第2章で使った数え方でそのまま出せます。実験回数から1を引いたものが、その表の持っている情報量です。
2水準の因子は 2 − 1 = 1、3水準の因子は 3 − 1 = 2 ずつ使うので、L8なら 7 ÷ 1 = 7因子、L27なら 26 ÷ 2 = 13因子。カッコの右肩の数字と一致します。
3. 因子の数と水準数から表を選ぶ3ステップ
直交表を選ぶ3ステップは下記です。
- 因子を2水準と3水準に仕分ける。
- 必要な列数を数える。
- 収まる一番小さい表を選ぶ。

実際の例で直交表を選んでみましょう。
例として、先ほどの5因子で考えます。
| 因子 | 水準 |
|---|---|
| 反応温度 | 60 / 80 / 100 °C |
| 触媒量 | 0.5 / 1.0 / 2.0 mol% |
| 反応時間 | 2 / 4 / 8 h |
| 撹拌速度 | 200 / 400 / 600 rpm |
| 溶媒 | トルエン / THF |
手順1:因子を2水準と3水準に仕分ける
3水準が4つ(反応温度・触媒量・反応時間・撹拌速度)、2水準が1つ(溶媒)です。
最初に仕分けるのは、これだけでグループが決まるからです。すべて2水準なら2水準系、すべて3水準なら3水準系、混ざっていれば混合系。この1手で候補が3分の1に絞れます。今回は混ざっているので混合系です。
温度を60°Cと100°Cの2点にすれば2水準系が使えて実験回数は減りますが、2点では直線しか引けません。収率が最大になるのが80°Cでも、そのことは見えないままです。曲線的な関係を見たいなら3水準を取ります。
手順2:必要な列数を数える
因子1つにつき1列です。今回は5列。
交互作用——因子の組み合わせによって効き方が変わること——も見たい場合は、その分の列を足します。ただし置ける場所は表ごとに決まっているので、ここでは主効果だけを見る前提で進めます。交互作用は第5章で扱います。
手順3:収まるいちばん小さい表を選ぶ
混合系のL18は、2水準を1つと3水準を7つまで入れられます。今回は2水準が1つ、3水準が4つですから、すべて収まります。実験回数は18回です。
総当たりなら 3 × 3 × 3 × 3 × 2 = 162回ですから、144回減ったことになります。
一番小さい表を選ぶのは、実験回数が少なく済むからです。
余った列は空けたままで構いません。第2章に書いたとおり、空き列はばらつきの見積もりに使えます。
4. L9・L8・L18の例——因子が連続変数か、質的変数か
この記事では各グループの代表として L9・L8・L18 を取り上げます。
因子3〜7個・実験20回以内——研究開発で多い規模——で、各グループの一番小さい表がこの3つだからです。
どのグループから選ぶかは、因子が連続量か、質的かで決まります。
- 連続変数(温度・濃度・時間・回転数)は、収率に対して曲線的な関係となる可能性がある。
→3水準を取りたくなる → L9・L18 - 質的変数(溶媒A/B、触媒A/B、撹拌あり/なし)で水準が2つしかない → L8

化学や材料では連続量を3〜5個に絞ってから振ることが多いのでL9・L18を使うことが多いですが、主役の表は分野で変わります。それでも、選び方の手順は同じです。
L9は前章で解説したため、L8とL18について追加で解説しておきます。
L8(2⁷):2水準7因子まで。質的な因子が多いとき/まず絞り込みたいとき
8回で、2水準の因子を7つまで。総当たりなら 2⁷ = 128回ですから、120回減ります。
出番は2つ。
- 質的な因子が多いとき
- 因子が多く、まず「どれが効くのか」だけ知りたいとき(スクリーニング)
比較的実験回数が少なく、交互作用を分けて見やすいです。交互作用を扱う第5章でL8が主役になるのは、この理由です。
L18(2¹×3⁷):2水準と3水準が混ざるときの第一候補
L18では、2水準因子と3水準因子を混在させて、多くの因子の主効果を効率よく評価できることが大きな特徴です。
一方、交互作用を主効果と分けて評価するには制約があります。交互作用を評価する場合は、列の割り付けや交絡を考慮する必要があります。
列の割り付けや交絡の考え方は別の記事で解説します。
L8・L18の数表とExcelテンプレート
使い方は前章をご確認ください。
5. 選んだ表に因子が入りきらない場合
早見表で選んだあとに困る「入らない」は、2つに分かれます。
- 数の問題 — 因子が多くて、列が足りない
- 水準の問題 — 因子の水準の数が、表の列と合わない
対処が違うので、分けて見ていきます。
列が足りない——3水準の因子を2水準に落とす
一番簡単なのは、3水準にしていた因子を2水準に落とすことです。
3水準の因子が5つあるとL9(4つまで)には入らずL27となり実験回数がかなり多くなります。
このとき、特定の因子を2水準に減らせば、混合系や2水準系になり、実験回数が大きく減ります。
ただし、2水準の因子は、曲線的な関係があっても分からないため、注意が必要です。
4水準の因子を入れたい——2水準の列を2本束ねる(多水準作成法)
溶媒をトルエン・THF・アセトニトリル・DMFの4種類で比べたい場合を考えます。
ところが、4水準の列はどの直交表にもありません。
そこで、2水準の列を2本束ねて、4水準の列を1本作ります。列1と列2の値の組み合わせは4通りあるので、それをそのまま水準1〜4と読み替えます。
但し、注意が1つあります。この方法を使うと、列3も使えなくなり、列を3つ使うことになります。
L8直交表を見ると、列1と列2の組が同じ行では、列3の値もいつも同じです。そのため、この連動する列に別の因子を置くと、溶媒の効果と切り分けができません。

L18で2水準の因子が2つある——3水準の列で受ける(ダミー水準法)
今回の例では2水準の因子は溶媒の1つだけでしたが、触媒の種類(A/B)も加えたいとします。
L18の2水準の列は1本しかないため、2つ目の2水準因子を置く場所がありません。
そこで、3水準の列を2水準因子に利用します。3つある水準のうち2つをA・Bに割り当て、残った1つをAまたはBのコピーにします。例えば「A・B・A」とします。これをダミー水準法と呼びます。
ただし、この方法ではAとBの実験回数が異なり、通常の直交性もそのままでは保たれません。そのため、解析では水準の割り付けや実験回数の違いを考慮する必要があります。

6. 次に学ぶ内容
下記の内容の記事も順次投稿していく予定です。
| こう思ったら | 次に学ぶ内容 |
|---|---|
| 表は決まった。どの列にどの因子を置けばいい? | 第4章 直交表の割付 |
| 因子どうしの交互作用も見たい | 第5章 交互作用 |
| 因子が8個以上あって、まずどれが効くかを知りたい | 第6章 スクリーニング |
| 水準と水準のあいだにある最適点を知りたい | 第10章 応答曲面法 |
| 実験は終わった。この差は本物か? | 「統計解析」シリーズ |
「この差は本物か」を判断する考え方そのものが初めての方は、先に統計学入門 第11章(仮説検定の基本)を読んでおくと、「統計解析シリーズ」の理解がずっと楽になります。
まとめ
- 直交表は2水準系・3水準系・混合系の3グループに分かれる
- 選ぶ手順は3つ。因子を水準で仕分ける → 列数を数える → 収まるいちばん小さい表を選ぶ
- L9・L8・L18の選び方の分かれ目は因子が連続量か、質的か
(連続量ならL9・L18、質的な因子が多いならL8) - 入りきらないときは水準を減らす・多水準作成法・ダミー水準法の3つ
次の第4章では、選んだ表のどの列に因子を置くか——割付を扱います。

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