「気温が上がるとアイスが売れる」「勉強時間が長いほどテストの点数が高い」——私たちの身のまわりには、2つのデータが連動して動く関係がたくさんあります。この関係の強さをひとつの数値で表したものが 相関係数(Correlation Coefficient) です。
相関係数とは、2つのデータの直線的な関係の強さと方向を −1 から +1 の値で表す指標です。この章では、散布図による関係の可視化から、相関係数 r の求め方(手計算の例つき)、強さの目安、そして「相関があっても因果があるとは限らない」という重要な注意点まで、図解でわかりやすく解説します。
12.1 まず散布図を描いてみよう:相関の3つのパターン
2つのデータの関係を調べる第一歩は、散布図(Scatter Plot) を描くことです。横軸に一方のデータ X(例:気温)、縦軸にもう一方のデータ Y(例:アイスの売上)をとり、1組のデータを1つの点としてプロットします。

| 相関の種類 | 散布図の形 | 相関係数 r | 身近な例 |
|---|---|---|---|
| 正の相関 | 右上がり | r > 0 | 気温↑ → アイスの売上↑ |
| 無相関 | 散らばり | r ≈ 0 | 靴のサイズとテストの点数 |
| 負の相関 | 右下がり | r < 0 | 気温↑ → ホットコーヒーの売上↓ |
散布図を見れば関係の「雰囲気」はつかめますが、「強い関係なのか、弱い関係なのか」を人によらず客観的に判断するには数値が必要です。そこで登場するのが相関係数です。
12.2 相関係数 r とは:関係の強さを −1〜+1 で表す
相関係数(正式にはピアソンの積率相関係数)は、記号 r で表し、必ず −1 ≤ r ≤ +1 の範囲に収まります。符号(+か−か)が関係の方向を、絶対値の大きさが関係の強さを表します。

| r の値 | 解釈 |
|---|---|
| r = +1 | 完全な正の相関(全点が右上がりの直線上) |
| +0.7 ≤ r < +1 | 強い正の相関 |
| +0.3 ≤ r < +0.7 | 中程度の正の相関 |
| −0.3 < r < +0.3 | 弱い相関(ほぼ無相関) |
| −0.7 < r ≤ −0.3 | 中程度の負の相関 |
| −1 < r ≤ −0.7 | 強い負の相関 |
| r = −1 | 完全な負の相関(全点が右下がりの直線上) |
💡 この区分はあくまで一般的な目安です。分野によって「強い」とされる基準は異なります。
12.3 相関係数の求め方:計算例つき
相関係数の計算式
相関係数 r は次の式で計算します。
一見すると複雑な式ですが、考え方はシンプルです。
分子は、xとyが同じ方向にどれだけ一緒に増減しているかを表しています。xが平均より大きいときにyも平均より大きいことが多ければ分子は正になり、逆の動きをすることが多ければ負になります。統計学では、この「一緒に増減する度合い」を表す量を「共分散」と呼びます。
一方、分母はxとyそれぞれのばらつきの大きさを表しています。
統計学では、この「一緒に増減する度合い」を表す共分散を、それぞれの標準偏差で標準化したものが相関係数です。
つまり相関係数は、「一緒に増減する度合い」を「それぞれのばらつきの大きさ」で調整した値です。そのため、単位に依存せず、値は必ず -1〜+1 の範囲に収まります。気温(℃)と売上(円)のように、単位がまったく異なるデータ同士でも関係の強さを比較できるのは、この標準化のおかげです。
計算例:勉強時間とテストの点数
5人の学生の「1日の勉強時間(x:時間)」と「テストの点数(y:点)」のデータで、実際に r を計算してみましょう。
| x(時間) | y(点) | x − x̄ | y − ȳ | (x−x̄)(y−ȳ) | (x−x̄)² | (y−ȳ)² |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 40 | −2 | −20 | 40 | 4 | 400 |
| 2 | 60 | −1 | 0 | 0 | 1 | 0 |
| 3 | 50 | 0 | −10 | 0 | 0 | 100 |
| 4 | 70 | +1 | +10 | 10 | 1 | 100 |
| 5 | 80 | +2 | +20 | 40 | 4 | 400 |
| 合計(Σ) | — | — | — | 90 | 10 | 1000 |
平均は です。式に当てはめると、
r = 0.90 なので、「勉強時間とテストの点数には強い正の相関がある」と言えます。
💡 実務メモ:Excel なら CORREL 関数(=CORREL(x範囲, y範囲))で一発で計算できます。手計算の仕組みを一度理解しておけば、あとはツールに任せて大丈夫です。
12.4 相関係数の3つの落とし穴
相関係数は便利な指標ですが、数値だけを見て判断すると誤解につながる場面があります。代表的な3つの落とし穴を押さえておきましょう。

| 落とし穴 | 何が起きるか | 対策 |
|---|---|---|
| ① 直線関係しか測れない | 「適度な運動は健康に良いが、やりすぎは逆効果」のような山型(曲線)の関係では、実際には関係があるのに r ≈ 0 になる | 必ず散布図を目で確認する |
| ② 外れ値に弱い | たった1点の極端なデータで r が大きく変わってしまう | 散布図で外れ値の有無を確認し、原因を調べる |
| ③ データが少ないと偶然に左右される | データが5点程度だと、実際には無関係でも偶然 |r| > 0.8 が出ることがある | データ数を確保する。r が意味のある値かは仮説検定(第11章)の考え方(無相関の検定)で確認できる |
⚠️ 共通する教訓は「r の数値だけで判断せず、必ず散布図とセットで見る」ことです。
12.5 相関と因果は別物:アイスが売れると水難事故が増える?
相関係数が高くても、それは「X が Y の原因である」ことを意味するわけではありません。相関関係と因果関係は別物です。これは、統計学でもっとも重要な注意点の一つです。
有名な例が「アイスクリームの売上」と「水難事故の件数」です。この2つには正の相関が見られることがありますが、「アイスを食べると溺れる」という因果関係があるわけではありません。
実際には、気温という第三の要因が両方に影響しています。気温が上がるとアイスクリームを買う人が増え、同時に海やプールで泳ぐ人も増えるため、水難事故も増えやすくなります。このように、2つの変数の両方に影響を与える第三の要因を交絡因子(こうらくいんし)と呼びます。
そのため、相関係数が高いだけでは因果関係を結論づけることはできず、実験や因果推論など別の方法で検証する必要があります。

| パターン | 説明 | 例 |
|---|---|---|
| 因果関係 | X が Y を直接引き起こす | 勉強時間↑ → 点数↑ |
| 交絡因子 | 第三の変数 Z が X にも Y にも影響 | 気温 → アイス売上・水難事故の両方 |
| 偶然の相関 | 論理的に無関係だがたまたま相関する | ある年の「映画の公開本数」と「プールの溺死者数」など |
💡 「相関がある」とわかったら、それは因果関係の仮説を立てるスタート地点です。本当に因果があるかは、条件をそろえた実験や追加の調査で確かめる必要があります。
第12章のまとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 散布図 | 2つのデータの関係を可視化する第一歩。右上がりなら正の相関、右下がりなら負の相関 |
| 相関係数 r | −1 ≤ r ≤ +1。符号が方向、絶対値が強さ。単位が違うデータどうしでも比較できる |
| 強さの目安 | |r| ≥ 0.7 で強い相関、0.3〜0.7 で中程度、0.3 未満はほぼ無相関(分野により基準は異なる) |
| 落とし穴 | 直線関係しか測れない・外れ値に弱い・少数データでは偶然に左右される。散布図とセットで見る |
| 相関≠因果 | 相関があっても因果があるとは限らない。交絡因子(第三の変数)を疑う |
2つのデータに相関があるとわかったら、次のステップは「一方の値からもう一方を予測する」ことです。散布図に直線を引いてデータの関係を式にする回帰分析を、第13章で解説します。
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